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「おい、ビールは冷やしてあるかい」
と、やがて相手は訊き返した。声音は落ちついて低かつたが、その裏には場合によつてはまるで反対の強さに瞬時に変りかねないことを感じさせる力がこもつていた。
「ごめん下さい」
「はゝゝ、でもカワラケにはちがひない、それがかうひよつとね」
「それとも、あれかね。やつぱり日露戦争のときみたいに、船で吉賀の先の浜へ上つてそれからやつて来るんかね」
「今日からお隣へ参りましたから、よろしく願います。」
「ふうん、潰れるだらうな」
男は眼を閉ぢたまゝだつた。
私は時間を忘れているが、ひょッとすると、一二分、又、一二分というように、ねむっているのかも知れない。頭のシンが疲れている時には、頭をシャボンの泡だらけにして、湯につかりながら、後頭部からコメカミへかけて十分も十五分も静かにもむこともある。両耳を抑えて、湯の中へ頭をもぐしこんでシャボンを落して、又、湯の温度に同化してしまう。
すると、道平の半ばひきつゝた表情の中には、又あの悦ばしさが、かうして歩いて来たことを人に見られるといふ満足が、ゆつくりと、何だか紙のずれるやうな工合に上つて行つた。
「それは、まあ、都会風でいけばそれでいゝわけだが」
のむことなら!といふ風に、練吉は切れ目をぱちぱちさせた。
「いや」
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