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    「ジョン、そら!ウシ!」

    「房一の仕わざではないか」と云ふことになつて、一同が手分けをして近所を探した。すると、老父が河へ下りる路の手前で馬に跨つている房一を見つけた。馬は此方へ向いてゆつくりと歩いていた。房一は父を見ると、彼の方から大声に父の名をよんで、馬上に得々としていた。後で皆が訊くと、馬は河へ下りる路の所までは楽に行つたが、そこからはどうしても下りなかつた、そして、彼が腹を蹴りつづけると、馬はくるりと向きを変へて家の方へ勝手に歩いて来たのだ、と云ふ。一同は大笑ひをしたが房一は小ましやくれた生まじめな顔で、まだ酔つたやうな眼をきらつかせていた。

    「さうです。農林学校の先生だとかをしていられると聞きましたが」

    と、ちやうど追鮎箱のところへ立つて行きかけた徳次は、事もなげに云つた。彼はその水際のところでいきなりシャツをはぎとると、バシヤバシヤツと水洗ひをして、それを日に焼けた石の上に乾した。そのまゝ房一と小谷の前に来ると、美事な半裸体のまゝ腕組みをして突立つた。一種単純な、力づくといつた様子が現れていた。

    房一は目を上げて何か訊きたさうにした。それを押へるやうに、

    どういふ加減からか、それを云ふ時、相沢はぐつと又相手の顔をのぞきこんだ。それは何となくもつたい振つた、重々しい様子だつた。

    が、それは徳次であつた。

    房一は鬼倉に向つて叮重ていちように云つた。

    庄谷はあの冷笑するやうな白眼で、物好に訊きたがる人に答へた。

    印袢纏の背の高い男がその時、半シャツの男に向つて目くばせをした。

    「あんたの犬かね」

    うまい工合だと感じた房一はすかさず云つた。

    「いや、危険はまづない見込だ。だが、何と云つたらいゝか――」

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